2010年5月14日 (金)

なつかしい友人に会ったような…

先日、書店で偶然阿部謹也さんの「自分のなかに歴史をよむ」という本(ちくま文庫、2007年。初刊本は1988年に筑摩書房から刊行)を見つけて、購入しました。30年ぶりくらいに阿部さんの本を読んで、(もちろん直接のお知り合いではまったくないのですが)なつかしい友人に会ったような気持ちになりました。

この本にはヨーロッパ中世の社会史を独特の視点で研究されてきた阿部さんが、どのようなことを考えて、このテーマにたどりついたのかが、子ども時代の一時期を過ごした修道院の施設のことも含めて、ご苦労の多かったであろうご自身の生い立ちから記述されています。

阿部さんの恩師である上原先生の「それをやらなければ生きてゆけないというテーマを探すのですね」という言葉が印象的です。

中世史を考える視点についても面白く読めますが、過去の歴史を考えることが、様々な歴史のしみこんでいる現在に生きる自分自身と向き合うことになる、ということも伝わってきます。読み物としても面白く読める一冊です。

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2009年2月 6日 (金)

旅館の番頭さんはどこで修行するのか?

風邪がなかなか良くなりません。休養の合間をぬって井伏鱒二の「駅前旅館」を読みました。体力のない時の読書には、途中で眠くなっても罪悪感を感じずにすむ、脱力系の小説、しかも文庫本が最適です。

昭和30年代初頭の上野駅前の旅館を舞台に生きる、番頭さんや女中さん、添乗員、居酒屋のおかみさんなどの独特の生態記録とでも言うべきものが、細部までリアルに描かれています。

それにしても、夏の間の江ノ島での呼び込みが番頭さんたちの出稼ぎ修行の場であり番頭の大学院であった、というのは初めて知りました。駅前旅館自体をほとんど見かけなくなったいまはさすがに違うでしょうけれども、けっこう事実に基づくことなのではないかと現地の様子を思い浮かべて考えました。

とりとめのない話ですが、とりあえず今日はここまで。

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2009年1月13日 (火)

読み終えた。

今年は年末年始の活動が続いて休みが余りなかったため、この連休はゆっくり休みました。そしてようやく、「カラマーゾフの兄弟」を読み終えました。

前回読んだ時(何年前かすらも思い出せません、かなり昔です)には、とにかくその重厚長大さへのチャレンジ、というところにばかり気がいっていたように思うのですが、今回は非常に読みやすく、そして面白かったです。それが単純に2回目だったからなのか、翻訳が違うせいなのかは、私にもよく分かりません。

読んでいて、「これは誰かの本にすごく似ている…」と感じ、それが何なのかを考えていたのですが、庄司薫さんの赤黒白青4部作(なつかしい!これを読んだのはすでに四半世紀前です…)が、語り口や登場人物、テーマも、共通項が多いように、思いました。ただ、今回の亀山郁夫さんの軽みのある翻訳でなければ、こんなことは考えなかったでしょうけれども。

それが当たっているかどうかはさておき、ストーリーだけでなく、重層的な読み方ができる面白さというのを体験することができました。主な登場人物のそれぞれがそれぞれの物語において主人公である、という読み方を、訳した亀山郁夫さんも「解題」のなかで提示しています。

あらすじも紹介しないで書きたいことだけ書いて恐縮ですが、やはり古典というのは、面白いですね。読めば読んだだけ、こたえてくれるものがあるような、気がしました。

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2008年12月29日 (月)

長い話

亀山郁夫さんの新訳の「カラマーゾフの兄弟」(光文社古典新訳文庫)を買いました。こういう古典が書店で平積みになっているというのも珍しいものです。

以前は読み終えた、といっても余りにも長大で複雑なため、私の中では「残って」いません。ほんとうに字を追っていって終わった、という以上のものではなかったように思います。

ロシアの小説は同じ人が場面によって違う名前で登場するので、筋書き以前に名前を覚えるのが一苦労で、常に最初のページの登場人物リストを見返しつつ読んでいました。

亀山訳への評価は色々あるようですが、私の場合、様々な訳を読み比べるなどという高次元の読み方はできないので、とにかく終わりまで読めれば…と思っています。

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2007年11月 8日 (木)

ヒラキをつくったことがありますか?

「図解 さかな料理指南」を読む。昨日のプラテーロと一緒に衝動買いした本。

この本では、ヒラキは自宅で三時間くらい干せば簡単にできる、と書いてあります。ヒラキの作り方図解イラストは大変わかりやすくおすすめです。といっても、著者はプロの料理人ではなく、魚好きが高じて書いた、ということ。これくらいなら私にもできるかも、と思わせるところがいいですね。

ただし、この本のレシピは即席でできる酒の肴が中心なので、アイデアをいだだくコラム集のような趣でぱらぱらと読んでいます。そういう点では、お休み前の典型的なクールダウン用読書です。

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2007年11月 7日 (水)

読み返した本

「プラテーロとわたし」を読む。

プラテーロというのは主人公の飼っている驢馬の名前です。スペインのヒメーネスという人(後年ノーベル文学賞を受けた人とのこと)が書いた散文詩です。

30年くらい前、小学校の時図書館でこの本を読んで、とても強い印象が残っていたのですが、おとなになって読み返すとまた違った印象があります。子どものことは時間が有り余っていたのでいっきに読みましたけど、いま読むと、1編が2頁くらいで短くて読みやすいのがいいなあ、とか、そういうことが先に気になったりもします

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2006年8月21日 (月)

「渡辺一夫敗戦日記」を読む

「渡辺一夫敗戦日記」(博文館新社)を読みました。敗戦直前の日本で一知識人として、また一人の人間として、戦争について誠実に考えていた方がいたことに感銘を受けました。

 渡辺一夫さんは1901年生まれのフランス文学研究者で、ラブレーの(とても長大な!)「ガルガンチュアとパンタグリュエル物語」などを訳された方です。「敗戦日記」は、戦後50年の節目にあたる1995年、ご本人の没後に出版されています。

 この日記は、筆者が笹塚に避難する前に住んでいた本郷一帯が東京大空襲で壊滅した翌日、45年3月11日に「一切の望みを棄てよ」という言葉から始められ、8月18日まで、日本語とフランス語(本はすべて日本語)で書きとめられて

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